広告の3D化

広告の3D化

今回は、効果的なマーケティング・キャンペーンを作成するために、3Dグラフィックスとレンダーファームの役割を見ていきましょう。

紀元前3000年、エジプトのテーベで一人の奴隷が持ち主のもとから逃げ出しました。奴隷の持ち主は、奴隷を探すためにパピルスの広告を町中に貼り出し、逃亡した奴隷を探しました。そしてそのパピルス紙は、持ち主の機織り店を宣伝する目的もあったのです。

これは、人類史上最も古い広告の証拠として残っています。

2023年現在、あなたは行きつけのカフェに向かう途中、コスメブランドの最新リップスティックを宣伝する電光掲示板が目に入りました。横断歩道の手前に止まっているタクシーの屋根には、近くの映画館で上映中の映画のポスターが掲示されています。そしてコーヒーショップで友人のインスタグラムを見ていると、缶コーヒーの動画広告が表示されました。

これが現代の宣伝広告です。 キリストが誕生する以前のエジプトの時代からは広告は進化していますが、その核となる目的は古来から一貫しています。広告は、視聴者から特定のアクションを引き起こすように設計されたコミュニケーションの一つであり、 商品を買う、映画を見るなど、見る人に特定の行動を起こさせることを目的としています。

では広告はどのようにして機能するのでしょうか?広告は、まず注目を集めることで消費者の欲求に働きかけます。様々なコンテンツがあふれている今日では、広告は視聴者を惹きつけるために目立つ必要があります(YouTube だけでも、毎分 500 時間のビデオがアップロードされています)。人間はもともとビジュアルに惹かれるものであるため、広告が注目を集めるかどうかは、そのビジュアルの良し悪しに大きく左右されます。

そこで3Dとレンダーファームの出番です。

広告の進化

これは史上初のビデオ広告です:

ご覧のとおり、ビデオ広告が始まった当初から、視覚効果はその役割を果たしていました。この1941年に制作されたシンプルな10秒の2D映画には、デザインと制作にアーティストのチームを必要としました。

そして映像技術やテクノロジーが進歩するにつれて、視覚効果の複雑さは増していきました。

インターネットやスマートフォンが普及する前は、広告といえばラジオ、印刷物 (新聞、看板、ポスターなど)、テレビが主流でした。 この時代、写真撮影と実写映画制作が主な手法だったのです。ブランドは自社製品を魅力的に見せるためにカメラマンやディレクターに多額の投資をし、これらの広告で自社製品を宣伝するために有名人にも報酬を支払って、写真やビデオに出演してもらっていました。

現代ではデジタルがメインとなっています。従来のテレビを見たり新聞を読んだりするのに比べ、人々はスマートフォンに多くの時間を費やしているため、企業はデジタル広告に注力しているのです。その結果、各ブランドはソーシャルメディア、検索エンジン、その他のオンライン・プラットフォームにより多くの広告を出すようになりました。

デジタルコンテンツが増え、デジタル広告の数も増えています。これらの広告は、他の広告との競争だけでなく、ペットの動画、スポーツのハイライト、スーパーモデルのリール、ダンスのカバー、メイクアップチュートリアル、ゲーム実況、など、さまざまな形態のエンターテインメントと競合しています。

視聴者に確実に気づいてもらうためには、広告はますます魅力的でなければなりません。広告のメッセージが強くても、見てもらえなければ効果はないのです。現代の広告は、視覚的に印象的で、アイデアが面白くなければなりません。

そこで3Dの出番となります。

広告における3Dの役割

3D グラフィックスではあらゆることが可能であるため、広告の表現に無限の可能性を提供します。販売を目的とした映像で3Dを使うには、一般的な方法があります。その代表的なテクニックをご紹介しましょう。

製品の利点をビジュアル化する

3Dは、靴底の柔らかさや燃料がエンジン内でどのように使用されるかなど、普段は目に見えないものを視覚的に表現するのに有効です。

この例では、3Dアーティストのクラーク・ジェームズとCGサーフェイサーのザック・チーサムが協力して、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に登場するシューズをベースに、NIKE.MAGシューズのセルフレーシング・テクノロジーを紹介するビジュアル広告を制作しました。 3D チームは、実際のシューズが発売される前に、この製品のテクノロジーをビジュアル化しなければいけませんでした。レンダリングにはCinema 4DとV-Rayを使用し、オンラインとローカルでレンダリングを行って、4週間で完成させました。

見えないものを可視化する

広告は時に、特定の機能や利益よりもむしろ感情を表現しようとすることがあります。3Dは、抽象的な概念に物理的な形を与えることに長けています。Apple Musicの広告では、さまざまな音楽ジャンルを表現するために、クリエイターがアプリのロゴをさまざまな3Dスタイルで表現しました。

不可能なキャラクターや状況を作り出す

創立70周年を迎えたオーストラリアの宅配便会社は、しゃべるカンガルーをキャラクターに使用して、企業の歴史について紹介しようと考えました。このようなアイデアを実現するのが3Dです。制作を依頼されたColorbleed Studiosは、Maya、V-Ray、Fusionなどの3Dツールを使って、このカンガルーをリアルに作成しました。そしてGarageFarm.NETのオンラインサービスを使ってレンダリングしました。

3Dが広告にどのようなメリットをもたらすかについては、まだまだ紹介しきれていませんが、広告にとって3Dは、視聴者の関心を引きつけ、魅力的なビジュアルを作り出すために非常に重要なのです。

レンダーファームと広告

広告が、テレビ、電話、PC、映画館のスクリーン、電光掲示板など、既存のビジュアルデバイスにのみ固執しているとしたら、レンダーファームは商業プロジェクトのレンダリングで手一杯になってしまいます。

しかし近年、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)といった新しい映像プラットフォームが開発されており、広告はこれらのプラットフォームで注目を集めようとしています。VRやARは、従来の単に「見る」というものをより没入感のある「体験」に変えます。これらのプラットフォームではプリレンダリングされた3Dグラフィックスが使用されるため、制作チームにとってレンダーファームが重要になってきています。

リアルタイムレンダリングは、特にバーチャルプロダクションにおいて、広告に大きな影響を与える可能性があります。バーチャル・プロダクションでは、背景を映し出す大型スクリーンの前で、生身の俳優や実物を使ってシーンを撮影します。Unreal Engine 5のような技術では、レンダーファームなしでビジュアルをリアルタイムでレンダリングできますが、固定カメラのシーンでは、まだプリレンダリングされた背景が使用されることがあります。

これが広告と何の関係があると思いますか? さて、バーチャル・プロダクションを使えば、ロケの必要性が減るので、制作費を劇的に削減できる可能性があります。「可能性」という言葉を使ったのは、現在、バーチャル・プロダクションのステージを予約するのはまだ非常に高価だからです。しかし、将来的にはより効率的で手頃な価格になることが期待されています。

最終的な考察

広告における3Dの役割は、人々の注意を引くための競争が激化し、より良いビジュアルが求められるようになるため、大きくなっていくでしょう。ビジュアルのハードルが上がるほど、フレームは複雑になり、レンダリング時間は長くなります。レンダーファームは、このような複雑な3Dシーンをコスト効率よく迅速に処理できるため、広告には欠かせない存在となっています。

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